【解説】
描かれているのは、ガマール・アブドゥン=ナーセル氏の肖像です。彼は1952年に起きたエジプト革命の主導者の一人で、1954年にはエジプト共和国の第2代大統領となった人物です。この絵が制作された1963年は、エジプト共和国とシリア共和国からなるアラブ連合共和国(※シリアは1961年に連合脱退)の初代大統領を務めていました。
彼の肖像の背景には、ピラミッド、スフィンクス、モスク、ナイル川、アオサギ…など、エジプトを象徴するものが彼を取り囲むように配置されています。
この作品は、ノーマン・ロックウェルがサタデー・イブニング・ポストの表紙のために描いた最後の作品となりました。とはいえ、彼の作品の人気は根強く、再掲載という形で今もなおサタデー・イブニング・ポストの表紙をしばしば飾っています。
【ウラ話】
ノーマン・ロックウェルは肖像画を描くためにエジプトに渡り、ガマール・アブドゥン=ナーセル大統領と対面しました。ナーセル氏はまず正面を向いてロックウェルに歯を見せて笑いました。しかし、ロックウェルは初めから横顔を描きたいと考えていたため、横を向くように指示してスケッチを始めました。これに反してナーセル氏は正面から描いてほしいという願望があったようで、改めてロックウェルを向き、再度ニカッと笑ったそうです。
エジプト革命の末に大統領となった男を目の前にし、おまけに屈強なガードマンに囲まれた状況なら、大概の人は雰囲気に流されそうなものですが、ロックウェルは考えを最後まで譲らず、ついにはナーセル氏の横顔を描き終えたのでした。ノーマン・ロックウェルの作品制作に懸ける強い思いが窺えます。
【詳細】
タイトル | Gamal Abdel Nasser [他タイトル] |
タイトル(邦題) | ガマール・アブドゥル=ナーセル |
掲載 | サタデー・イブニング・ポスト表紙(1963.05.25) |
技法/材質 | 油彩/キャンバス |
寸法 | |
所蔵 | 所在不明 |