ノーマン・ロックウェルは、雑誌の表紙絵や広告など、いわゆる「商業美術」の分野で活躍したアメリカのイラストレーターの巨匠です。彼は生涯2,000点を超える作品を世に残しました。その中でも雑誌「サタデー・イブニング・ポスト」の表紙絵は特に有名で、47年間(1916年~1963年)もの間この雑誌の表紙を飾り続けました。ロックウェルは「古き良きアメリカ」を描いたとよく表現され、彼はアメリカ日常生活のワンシーンをユーモアを交えて巧みに描き、我々に温かみやノスタルジア(郷愁)を感じさせます。また、ユーモラスな作品だけではなく、晩年には人種差別を題材とした作品やルーズベルト大統領の演説をもとにした連作「4つの自由」を制作するなど、社会性・政治性を帯びた作品も描きました。
ノーマン・ロックウェルの作品の美術的評価は年々高まっています。かつて彼が描いた商業主義的な作品は画家のそれとは大きく区別され、美術品として評価されてきませんでした。しかしながら、ノーマン・ロックウェル没後の20世紀末頃から美術界で再評価されるようになり、今日ではアメリカで最も有名な「アーティスト」の1人として確固たる地位を得たのです。現在、彼の作品のほとんどはマサチューセッツ州ストックブリッジにある「ノーマン・ロックウェル美術館」で観ることができます。ただし、1943年にノーマン・ロックウェルのアトリエが火事となり、多数の作品が焼失しました。一部の作品しか現存していないことが非常に残念です。